TellAria

夢を編む織り手

悪夢を消し去るか、その中に隠れた真実を残すか、織り手は迫られる。

Beginning

町のはずれ、川が二筋に分かれるところに、夢を編む織り手が住んでいた。名を織江という。年のほどは誰も知らず、白髪の下の目だけが、まだ濡れた墨のように黒かった。彼女の仕事場には、天井まで届く一台の織機が据えられていて、その縦糸は空気そのものから紡がれているように見えた。人が眠ると、その眠りから細い糸が立ちのぼる。喜びは金の糸に、悲しみは藍の糸に、忘れたい記憶はほどけかけた鼠色の糸になって、夜の底をたゆたう。織江はそれを手繰り寄せ、布を織る。眠れぬ者のためには忘却の布を、旅立つ者のためには餞の布を。町の人々は、彼女の織った布を枕の下に敷けば、望んだ夢が見られると信じていた。

その晩、戸を叩いたのは志乃という女だった。片手に提灯を、もう片方の手に、痩せた少年の手を握っていた。少年は灯真といって、十二になるという。だが、その目の落ちくぼみようは、十二の子どものものではなかった。まるで、何年も眠っていない者の目だった。

「もう半年になります」と志乃は言った。声が、糸の切れる寸前のように張りつめていた。「この子は、眠るたびに悪い夢ばかり見るのです。夜ごと叫んで起きて、朝には何も覚えていないと言う。医者に診せても、祈祷師に頼んでも、何ひとつ変わりませんでした。どうか、あなたの布で──この子から悪い夢を、すっかり織り出してやってはくださいませんか」