TellAria

永遠の図書館員

記録を正すか、世界の秩序を守るために見逃すか、図書館員は迫られる。

Beginning

私が、何年、この、図書館に、いるのか——それは、もはや、私にも、わからない。いや、"年"などという、言葉は、ここでは、意味を、なさない。ここは、死後の、世界。生を、終えた、すべての、人間の、"記録"が、収められる、無限の、書庫である。天井は、なく、書架は、上へ、上へと、霞の、彼方まで、そびえ、横へ、横へと、地平線を、越えて、連なっている。一つの、生には、一冊の、書物。人が、この世に、生まれ、泣き、笑い、罪を、犯し、誰かを、愛し、そして、死んでいく——その、すべてが、一言一句、余さず、この、館の、いずれかの、頁に、刻まれている。そして、私は。その、無限の、記録を、管理する、"図書館員"であった。

私の、務めは、単純にして、厳粛である。新たに、生を、終えた、魂が、到着するたび、その、生涯の、記録を、一冊の、書物へと、綴じ、"確定"の、封印を、施し、正しき、書架へと、収める。ここでは、その、記録こそが、魂の、"すべて"だ。魂は、己の、記録に、記された、通りの、者として、量られ、記された、通りの、場所へと、送られていく。記録が、真実で、ある、限り——死後の、世界の、秩序は、寸分の、狂いも、なく、保たれる。真実。そう、真実こそが、この、無限の、図書館を、支える、ただ一本の、背骨で、あった。私は、その、真実の、番人。感情を、差し挟まず、判断を、下さず、ただ、"あった、ことを、あった、ままに"、守り続ける。それが、幾星霜にも、渡る、私の、変わらぬ、存在の、理由で、あった。

だが——その、日。永遠に、続くかと、思われた、私の、静謐な、務めに。一つの、"綻び"が、生じた。私は、いつものように、書架の、間を、巡回して、いた。すると——ある、一冊の、書物が、かすかに、私を、呼んでいるかの、ように、感じられたのだ。棚から、抜き出す。それは、とうの昔に、"確定"の、封印を、施された、古い、記録で、あった。封印された、記録は、二度と、書き換えられることは、ない。それが、この、図書館の、根源の、掟だ。ところが——その、封印が。破られていた。誰かの、手によって、こじ開けられた、痕跡が、生々しく、残っていた。そして、頁を、開いた、私は——息を、呑んだ。