沈黙の証人
真実を語るか、脅しに屈して黙るか、少年は迫られる。
Beginning
その夜、田所慎が見てしまったものは、それから幾晩も、彼の瞼の裏に、消えることなく焼きついて離れなかった。
十三歳の慎が、母に内緒で家を抜け出したのは、些細な理由からだった。寝つけない夜。溜まった苛立ち。母は夜勤で不在、幼い妹の寝顔だけが、薄闇の中に浮かんでいた。慎は自転車に跨がり、あてもなく、深夜の街を走った。川沿いの、街灯もまばらな遊歩道。そこへ差しかかったとき、彼はふと、河川敷の暗がりに、二つの人影を認めたのだ。
最初は、酔漢の諍いか何かだと思った。だが——違った。一方の男が、もう一方の男の首に、背後から腕を回している。羽交い締めではない。もっと、静かで、もっと、確実な動き。締め上げられた男は、声もなく、ただ手足を、痙攣させるように、ばたつかせ、そして——やがて、その動きが、ぴたりと、止んだ。慎の全身から、血の気が引いた。彼は、殺人の、まさにその瞬間を、目撃してしまったのだ。自転車のブレーキが、きい、と、小さく鳴った。それが、いけなかった。