TellAria

星を継ぐ者たち

船の使命を守るか、隠された真実を暴くか、若者は迫られる。

Beginning

世代宇宙船〈方舟(アーク)〉は、二百三十七年前、滅びゆく地球を、あとにした。八千人の、乗員を、乗せて。目指すは、はるか、四光年の彼方——人が、住めると、算定された、たった一つの、惑星、〈新緑星〉。船内で、生まれ、船内で、老い、船内で、死ぬ。何世代もの、人間が、たすきを、つなぐように、その、途方もない、旅を、続けてきた。到着予定は、いまから、およそ、六十年後。星織アオイの、孫の、世代が、ようやく、その、約束の、大地を、踏むことに、なる。

アオイは、十九歳。船の、記録保管室で、働く、若い、記録士だった。彼女の、仕事は、二百年分の、膨大な、航行記録を、整理し、次の世代へと、正しく、引き継ぐこと。船では、それが、何よりも、尊い、務めとされていた。「私たちは、星を、継ぐ者。過去から、未来へ、記憶を、運ぶ、器なのだ」。幼いころから、アオイは、そう、教えられて、育った。窓の外には、いつも、変わらぬ、漆黒の、宇宙と、静かに、瞬く、無数の、星々が、あった。

その、異変に、アオイが、気づいたのは、まったくの、偶然だった。古い、天測記録の、データを、整理していたとき。船の、外部センサーが、捉えた、星々の、配置が——二百年前の、記録と、ほとんど、変わっていないことに、彼女は、気づいたのだ。時速、数万キロで、飛ぶ船から、見る星が、二世紀のあいだ、ほぼ、動かない。それは、あまりに、奇妙だった。恒星は、遠い。だが、四光年の、旅の、半ばまで、来たのなら、目標の、〈新緑星〉は、もっと、大きく、近く、見えて、いなければ、ならないはずだった。