嘘つき占い師
真実を告げるか、客の望む嘘を続けるか、占い師は迷う。
Beginning
星読みのサヤは、町でいちばん、当たらない占い師だった。
商店街のはずれ、色あせた紫の暖簾のかかった小さな店で、サヤは、もう二十年、水晶玉をのぞきつづけている。「西へ旅立てば、幸運が待っています」と彼女が言えば、客は北へ引っ越して失敗し、「その恋は、実ります」と太鼓判を押せば、たいてい、その恋は破れた。彼女の予言は、面白いほど、当たらなかった。
それでも、サヤの店には、客が絶えなかった。なぜなら、サヤの占いは、いつも、あたたかかったからだ。仕事をなくして、うなだれる男には、「あなたには、まだ見ぬ才能がある」と微笑み、失恋した娘には、「あなたを大切にする人が、必ず現れる」と、そっと手を握る。当たろうが当たるまいが、人々は、サヤのその言葉に、明日を生きる、小さな元気をもらって、帰っていった。サヤは、知っていた。自分の仕事は、未来を当てることではなく、傷ついた人の心を、そっと、なでることなのだと。彼女は、やさしい嘘つきだった。