消えた切符
知らない人の親切を受けるか、疑うか、会社員は迷う。
Beginning
終電に近い時刻の、その駅は、うすら寒く、静まりかえっていた。
藤田は、改札の前で、上着の内ポケットを、三度、探った。ない。ズボンのポケットも、鞄の中も、隅から隅まで、探した。それでも、財布は、どこにも、なかった。定期券も、現金も、カードも、身分証も、すべてが、その、黒い革の財布の中に、入っていた。そして、それが、まるごと、消えていた。
「落とした……? いや、まさか、抜かれたのか」
知らない人の親切を受けるか、疑うか、会社員は迷う。
終電に近い時刻の、その駅は、うすら寒く、静まりかえっていた。
藤田は、改札の前で、上着の内ポケットを、三度、探った。ない。ズボンのポケットも、鞄の中も、隅から隅まで、探した。それでも、財布は、どこにも、なかった。定期券も、現金も、カードも、身分証も、すべてが、その、黒い革の財布の中に、入っていた。そして、それが、まるごと、消えていた。
「落とした……? いや、まさか、抜かれたのか」