古書店の幽霊
幽霊を成仏させるか、共に店を守るか、青年は迷う。
Beginning
真司が、その古書店で働きはじめて、三か月がたっていた。
「暁書房」は、駅から、細い路地を、いくつも曲がった先にある、小さな店だった。天井まで届く本棚が、迷路のように、ぎっしりと並び、日中でも、店の奥は、うす暗い。古い紙と、ほこりの、においがする。無口な老店主は、たいてい、レジの奥で、うたた寝をしていた。客は、めったに来ない。
大学を、中退し、故郷にも帰れず、行き場をなくしていた真司にとって、この、時間の止まったような店は、ふしぎと、居心地がよかった。古い本の背表紙を、ながめていると、ざわついた心が、静かになった。